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キリンチャレンジ2000 シドニーオリンピックサッカー日本代表(U-23)強化試合
by 賀川 浩

 4-0、中村俊輔のみごとなFKの先制ゴール、DF中田のロングシュートのリバウンドを取った高原のボレーシュートの2点目、中村からのクロスのこぼれ球(相手GKのミス)を高原が決めた3点目。そして稲本の突進で生まれたルーズボールに走りこんだ、小島のゴール。個人のボールテクニックも、チームのコンビネーションも、そして走力をはじめとするフィジカル面でも日本の方が上だったから、このスコアの開きは妥当なところだろう。中田英寿や小野がいなくても、中村俊輔ひとりいれば、これだけのゲームができるのだから、この世代の日本代表の能力は大したものだと思う。  もっとも、その反面、これだけ技術レベルが高くなっても、日本人ばかりでチームを組むと、やはり、日本代表チームなんだなァと思ってしまう。それは、この世代の彼らも先輩たちと同じように"速攻"の1点ばり、いわゆる緩急の変化に乏しいし、左右のコーナーからペナルティーエリアまでを使う着想が少い。もちろん中田英寿がおれば、違った形をつくるだろうし、小野が入っておれば独特の「間」(ま)で別のタイミングを生み出すだろうがー。  早いテンポでダイレクトパスをバシバシとかわし、密集している相手DFの間を突破する攻撃は、見た目にはまことにすばらしいが、そのみごとな速攻がなぜ有効なフィニッシュに結びつかないかを選手たちが自分で考え工夫しなければなるまい。  テレビの解説でも、あるいは紙面の批評でも「緩・急」がない−という声がでていたのは、そういう見方のできるコメンテーターが出るようになったと(日本サッカー全体のレベルアップだと)うれしく思ったのだが、少し前の日本代表のチームでも急を生かすために緩のプレーができたのはラモスが現れてからだった。欧州や南米のプレーヤーにはごく普通のことであるスローとクイックの切り替えは、日本人にはどういうわけか難しいらしい。  代表ではないが、たとえばJリーグの名古屋グランパスにはストイコビッチというテンポの変化のモデルが目の前にいるのに、なかなか周囲は、それをモノにできないし、またそれを生かすこともできない。先の対東京FC戦で1-1の後、エリアの外でストイコビッチがノーマークでボールを持ったとき、彼は中央へパスを送るキックフェイントの後、縦に流して平野に渡し、そこから平野が速い(ゴールライン上並行の)クロスを送ったチャンスがあった。ストイコビッチのゆったりした構えとフェイントの後のパスから一気に平野のスピードクロスとなって、東京DFは完全に嘘をつかれたが、この平野の鋭いパスに岡山はわずかに届かなかった。ストイコビッチが作る「間」の効果の大きさ、緩と急の落差の大きさを仲間が理解しておれば、文句のないゴールとなったはず。  ついでながら、このときストイコビッチが平野にパスを出したスペースがペナルティエリアすぐ外、このスペースへゴールライン近くから出てくるパスに対して相手のDFは(1)ボールを注視しながら(2)自分のマーク相手の動きを監視するのが、非常に難しくなる。逆の立場から言えば攻撃側は、DFのマークをはずしやすくなるわけだ。今回の対ニュージーランド戦で、このスペースをもう少し多く使ったほうがよく、それによって生じる余裕で、もう少し「技あり」のゴールも取れたと思う。  シドニー組が彼ら一人一人の工夫で、これまでの日本人チームの枠を超えてほしいと願うのだが──。