NEWS
| NEWS INDEXへ戻る |

 

Jリーグ1stステージ セレッソ無念のVゴール負け、マリノス逆転

By ジェレミー・ウォーカー

東京(2000年5月27日)
 Jリーグファーストステージは劇的な幕切れとなった。見事優勝を飾ったのは横浜F・マリノスで、セレッソ大阪はまさに地獄を見た土曜日となった。
 その厳しい事実は、以下の通り。

 リーグ中位のジェフ市原を国立で2―0と下したF・マリノスが、勝ち点30で全15試合を終了。
 一方、降格の危機にさらされた川崎フロンターレ相手に、ホームで1―2の延長Vゴール負けを喫したセレッソ。勝ち点は29のまま動かず、優勝にわずか1ポイント届かなかった。
 だがこの結果だけで、日本サッカー界の熱い一日の物語を片付けてしまうことはできない。その物語のために、この競技“beautiful game”は世界中の人々を魅了しつづけている。

 舞台設定を確認しておこう。最終節を残し、F・マリノスを勝ち点2差でリードしたセレッソが、フロンターレを下せば無条件で優勝決定。
勝ち点3を得る90分以内の勝利はもちろん、勝ち点2の延長Vゴール勝ちでも、 F・マリノスはジェフ戦の結果に関わらず、追い付くことは不可能という状況であった。
 しかし、長居スタジアムの43,193人の観衆を前にしたセレッソイレブンは思ったように体が動いてくれない。
 無得点のまま前半を終えたイレブンは苛立ち、ナーバスになっているように見えた。一瞬ちゅうちょを見せた、ホームのセレッソDF網をドリブルで突破した FW我那覇和樹のゴールにより、後半4分にフロンターレが先制点を記録しても、それは驚くべき出来事ではなかったのである。
 だがその11分後、安堵とともにセレッソサポーターの歓喜がはじける。キャプテン森島寛晃の右からのクロスに日本代表FW西澤明訓が飛び込み、試合は振り出しへ。
 試合は1―1のまま90分を終了し、延長戦へと突入する。延長でも勝利を収めれば、セレッソは優勝に手が届く。

 その頃国立では、38分にエジミウソン、後半にも遠藤彰弘がゴールをマークし、F・マリノスがジェフを2―0で下していた。
 試合終了の笛が吹かれ、セレッソの結果待ちとなったF・マリノスイレブンとサポーターは、電光掲示板で長居の延長戦の行方を見守ることになる。フロンターレが勝ってくれることを一心に祈りながら。
 延長後半が開始して間もなく、その瞬間は訪れた。殊勲のVゴールを挙げたのは、途中出場のフロンターレFW浦田尚希であった。1部残留に向け勝ち点を稼ぎ、喜ぶフロンターレ。優勝が決まり、こちらも喜ぶマリノス。ただセレッソの選手だけが、悲しみにガックリ膝をついていた。
 サッカーにおける感動の全てがぎっしりと詰まった舞台。選手と日本中のサッカーファンとが、その感動を分かち合った一日であった。

 F・マリノスのアルゼンチン人監督、オジー・アルディレスは選手を抱擁し、喜びに顔を輝かせる。「まさか信じられない。決して諦めることなく、どんなときも自分を信じていれば、こういうことも起こり得ると分かっていただけたと思う。その姿勢が優勝につながった」
 2点目を挙げた遠藤が、皆の気持ちを簡潔に表す。「奇跡が起きた」―彼の言葉に異論を唱える者はいないだろう。日本代表GKの川口能活も、そう感じている。「みんな一生懸命プレーしていた。うちは優勝に相応しいチームだと思う。でも今日のようなゲームは、心臓に悪い」

 再び大阪に目を移すと、ピンク色の紙テープをいつまでも投げ続けるセレッソサポーターの姿が。彼らは優勝を逃した現実を把握できずにいた。
 あと一歩に迫った優勝を逃し、選手の多くは涙した。起き上がってピッチを離れると、力強い応援をしてくれたサポーターに感謝の意を表した。
 そして深々とお辞儀をすると、放心状態のまま控え室へと消えて行った。
 リーグは両試合会場に優勝杯を用意したものの、日の目を見たのは青・白・赤のマリノスカラーに飾り立てられた国立競技場の片方だけであった。 セレッソ監督の副島博志は、敗北にも気丈に振舞ってみせる。 「今できるのは、セカンドステージに向けて準備することだ。選手はみな全力を尽くしてくれたので、今日の敗因は適切な決断を下せなかった私にある」
 それは、15試合で10得点をマークしている西澤を延長突入直前に引っ込めた選手交代についてでもあろう。

 1日が終わってみれば、横浜F・マリノスが勝ち点30で堂々と(そしてもちろん少々驚きではあるが)首位 の座に。29ポイントでセレッソが続いた。僅差であるが、大きな1ポイント差。
 静岡ダービーを2―0で制し、3位に滑り込んだのは清水エスパルス。伊東輝悦と昨年度MVPアレックスのゴールで、ジュビロ磐田を下した。
 勝ち点26の4位は、2―1とホームでガンバ大阪を下した柏レイソル。ガンバは勝ち点17にとどまり、降格を避けるためにはセカンドステージで更なる勝ち点が望まれる。
 5位は勝ち点25のジュビロ、6位にはアウェーで0―3とヴェルディ川崎に敗れ、勝ち点23のFC東京。この日2ゴールを挙げ通 算12得点とした金鉉錫は、森島と並び得点ランク首位を走っている。
 勝ち点22のヴィッセル神戸と鹿島アントラーズは、それぞれ7位と8位 。
 アビスパ福岡をホームに迎えたヴィッセルは、韓国代表河錫舟のフリーキックによるゴールを守り切った。五輪代表平瀬智行の2ゴールと本山雅志の1ゴールで、アントラーズは最下位 の京都サンガを蹴散らしている。最下位の16位は、勝ち点わずか7のサンガ。同10のフロンターレは15位 に着ける。
 「安全圏内」の14位には、勝ち点15のアビスパ。勝ち点17で13位にガンバ、さらに同19にサンフレッチェ広島、ジェフ、名古屋グランパスの3チーム。
 しかし何といっても、この日の主役はF・マリノスだ。届かないと思われた首位 の座へたどり着き、チャンピオンシップ出場権を確保したのだから。
 何と素晴らしき、日本サッカーの1日!