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なかなか遭遇できない宮城スタジアム

Byジェレミー・ウォーカー
東京(2000年6月13日)
 バスが整然とした稲田の間を進み、新興住宅街を抜け坂道を登って行くと、何が待ち受けているのか、おおよそ見当もつかない。そこに広がる光景を見ると、乗客たちは自分の目を疑う。スティーブン・スピルバーグ監督作品、『未知との遭遇』リメーク版が映し出されたかのような錯覚に襲われるのだ。
 しかし丘の頂上に浮かぶ、まばゆい銀色の宇宙船の正体は、2002年ワールドカップ開催10会場の一つ、宮城スタジアムなのだ。
 この世のものとは思えないスタジアム、実に2億6000万ドルもの費用がかかっている。だが、クアラルンプールに本部を置くアジアサッカー連盟・事務総長のピーター・ベラパンによると、金額の割には万事順調というわけでもない。

 まずは道路状況がよくない。仙台に程近い、最寄りの利府駅からスタジアムまでは、通 常バスを使ってものの10分で行けるのだが、キリンカップ初戦・日本―スロバキア戦のこの日、実に1時間もかかってしまった。
 3ヶ国対抗のキリンカップを主催する日本サッカー協会は、交通渋滞を避けるため、入場門の開く10時30分(キックオフ3時間前)の来場を促した。
 しかしその時刻のずっと前から、大勢のウルトラ・ニッポン(サポーターグループ)が整然と列を作っていた。その列は丘の中腹あたりまで伸び、あたかも公開された『ET』を観んと並ぶSFファンのよう。さらにヘリコプターが上空で弧 を描き、その印象を増していた。
 試合後は試合後で、周辺の駅へと向かうバスやタクシーを待つよりか、ちょっと頑張って歩いたほうがよほどまし。人々の列は丘を下りて森へと伸び、少し進むのにも時間を要する始末だ。
 主要高速道路からのジャンクション建設が新たに計画されており、完成すればスタジアムまでの道のりは近くなるのだが、ベラパンはすぐには期待できないとしている。
「唯一の懸念はスタジアムへのアクセス。試合当日の朝は3つの道路の様子を見ていたが、そのいずれもが田舎道だ。宮城県には、高速道路の連結を急ぐよう通 達することになろう」―FIFA・2002年ワールドカップ組織委員会のコーディネーターでもある、マレーシア人のベラパンは交通 上の問題を挙げた。

 日本のサッカーファンと言えば、その振る舞いのよさで知られている。98 年のフランスワールドカップで紙テープをプラスチック製のくず入れに集め、試合後に持ち帰りニュースとなった日本サポーターの行為に触れ、ベラパンは「午前8時から待っているというのに、ファンは文句を言うこともない。こんなことは秩序の保たれた日本でしかあり得ない。だが1試合のために、彼らを7時間も8時間も外で待たせておくのはどうかと思う」とコメントしている。
 さらに雨も問題となる。2002年大会は梅雨の真っ只中に開催されるため、多くの雨量 が予想される。
 観客席全体を覆う巨大なブーメラン型の屋根が設置されてはいるものの、一たび雨が降れば、観衆は避けることができない。
「日本のどのスタジアムもピッチは良好で、キリンカップの組織もよくできている。宮城スタジアムが本当に素晴らしい競技場であることに異論はない。しかし(決勝会場の)横浜を含め、観客への雨の影響を忘れてしまっているようだ。どしゃ降りと強風が重なれば、スタジアムの半分は水びたしになる」とベラパン。
 日本組織委員会・広報メディア局長の山口光氏は、11日のゲームから学ぶべき点が多いにあり、あと2年のうちで欠点を修正して行くと言う。
「交通渋滞は予測していましたし、早くから押しかけるファンが出てくることも分かっていました。新しい高速道路出口が完成すれば、スタジアムへの直通 道路が増えます。これから交通状況を注意深く調べることになるでしょう」と語っている。