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レッズ引っ張る小野が前園を超えた

マイク・プラストウ

 10日夜の平塚競技場ではJ2の浦和レッズが湘南ベルマーレに2−0で勝った。シドニー五輪を一週間前に控えたこの対戦では、アトランタ大会の代表チームキャプテンでかつては日本サッカー界の最高年棒を記録した前園真聖と、長きにわたってシドニーでの活躍を期待されつつも五輪代表メンバーから外れた小野伸二の両選手が注目された。

 ベルマーレを引っ張る前園は、日本がブラジルとハンガリーを敗ったアトランタでも牽引役を務めていた。アトランタ時代のチームメイト、中田英寿がペルージャとローマで、城彰二がバリャドリードで、それぞれが異国で名声を得ているのにひきかえ、それ以降の前園のキャリアは下降線を描く一方。ブラジルのサントスとゴイアスの門は叩いたが、ものの数ヶ月でブラジルを後にすることになった。
 26歳になった前園は、中田がかつて在籍し、現在はJ2のベルマーレ唯一のスター選手となっている。そして皮肉にも、親友であるヒデの公式サイトである“Nakata.net”のロゴがプリントされたユニフォームをまとっているのだ。

 一方、レッズのキャプテンを務める20歳の小野伸二にとっての苦悩は、フィリップ・トルシエの選んだシドニー五輪本大会代表メンバーから、自分が外されたことである。18歳にしてきら星の如くサッカーシーンに登場、ワールドカップにおいてはわずかながら試合を経験、Jリーグ新人王とAFC年間最優秀ユース選手賞に選出される。オリンピック1次予選の8試合では中盤の司令塔を務めたが、フィリピン選手から激しいタックルを受け、じん帯断裂という大ケガを負ってしまう。

 昨年は小野にとって、まさしく悪夢のような一年であった。度重なる負傷のせいで、復帰後でさえ十分なプレー時間を取ることはできなかった。小野の体調が万全でないにもかかわらずトルシエは彼を招集し続け、またチームの一員であることを強調し続けたのだが、結果として稀有の才能を備えたMFは、時間的に間に合わなかった。 「練習中もまだ、彼の足は傷んでいる。医師からのゴーサインが出たから小野はプレーしているわけだが、あらゆることに注意を怠ってはいけないのだ」と、斉藤和夫監督は話す。

 そして10日夜の平塚競技場において、今では色褪せたアトランタのスターと惜しくもシドニーで活躍をみせることのないスター。日本における最高のパサーであり、プレースキックのスペシャリストである2人が、昇格を目指すレッズにとって重要な一戦で顔を合わせたのである。
 レッズは試合開始からベルマーレにプレッシャーをかける。ワールドカップ日本代表の経験を持つFW岡野雅行が開始わずか3分、スピードを生かした突破から際どいシュートを放つ。その数分後には小野が、ペナルティー・エリア外側から鋭いハーフ・ボレーをみせた。
 早い時間帯のレッズの攻勢は17分に実を結ぶ。クビツァのプレスから、ベルマーレのDF時崎悠がハンドの反則を犯してしまったのだ。PKのキッカーは小野。落ち着き払ったキックは相手GKの逆方向を突き、キーパーの左足の横をボールが通り過ぎていった。
 ベルマーレは松原良香、酒井良、和波智広らがサイドを激しく駆け上がる。松原と前園との見事なワンツーが決まった場面も、レッズGK田北雄気のファイン・セーブに会う。田北に弾かれた松原のシュートはポスト中央横あたりにそれていった。その後の前園のコーナーキックはクリアされるも、再度クロスを放り込み、それに松原が頭で合わせるが、わずかにバーの上を越えた。しかしベルマーレの中盤はゲームの大部分で激しさは見られず、それがレッズの大胆過ぎるほどの攻撃を許すこととなる。

 後半に入り反撃に出るベルマーレに対し、自重気味のレッズはカウンター・アタックで対抗する。それでもベルマーレはペースを自軍に手繰り寄せることができずに、決定的チャンスは全てアウェーチームに訪れてしまう。ゲームが再び動いたのは、試合も残り5分となった頃。岡野からのラストパスをクビツァが決め、85分に2−0とリードを広げた。 そして87分、白井がこの日2枚目のイエロー・カードで退場処分となり、ベルマーレの不幸はここに重なる。試合終了間際に吉野智行が招いたピンチも、GK田北が2度目のスーパーセーブで切り抜けた。 「もっと連係をよくする必要があるし、チーム一丸となって勝ち進むにはさらに安定感が必要だ。だが問題があるのはディフェンスだ。うちは1点のリードを守り抜いて勝てるだけのチームではないけれども、勝ち点3を得たことには満足している」とは、レッズの斉藤監督の弁だ。

 一方、ベルマーレの加藤久監督は「(今日のスコアと)違った結果を出そうとするなら、うちはスタート時からナーバスにならないこと。レッズは他のどのチームよりもボールへのプレッシャーが早いので、それに選手は過度に緊張してしまっている。しかしレッズとの過去2戦に比べると、連係もできていたし、攻撃面もよかった」と話す。

 小野にとっては五輪代表メンバーからの落選は痛手であったが、この日の伸二のパフォーマンスは、1部昇格を争うレッズにとって、彼がチームに留まることの大切さを改めて感じさせた。ベスト時に比べ動きは遅くなり、用心深さを増した小野であるが、彼の中盤での巧みな球さばきが、この日の両チームの決定的な違いであった。

 一方の前園はといえば、こう主張している。 「僕の夢は何一つ変わっていない。ただ全力で努力を続けて行くだけ」