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オリンピック日記 by 賀川 浩

9月20日 「日本0−1ブラジル」

 日本は2勝していても、もしブラジルに負け、南アフリカがスロバキアに勝てばベスト8に残れない−という、追いつめられた立場、そしてブラジルには健闘はしたが敗れたのだが、南アフリカがスロバキアに1−2で敗れたためにD組の順位は

  1. ブラジル  2勝1敗 勝ち点6 得点5 失点4(点差 1) 
  2. 日 本   2勝1敗 勝ち点6 得点4 失点3(点差 1)
  3. 南アフリカ 1勝2敗 勝ち点3 得点5 失点5(点差 0)
  4. スロバキア 1勝2敗 勝ち点3 得点3 失点5(点差-2)

となって、日本の準々決勝進出が決まった。
 「サッカーでは何が起きるかわからない。」といわれるとおり、それがまたサッカーの面白さでこわさでもある。もちろん、第2戦でブラジルという強敵を倒した南アフリカが当然、全力を出し切ったあと(2日休みで)の試合、しかも中軸選手のフォーチュンを出場停止で欠く戦力ダウンは予想されても、2敗しているスロバキアが、勝利をつかむとは−彼らは、もし日本がブラジルに勝てば、日本が3勝、他の3チームは1勝2敗となり、順位は得失点計算にかかるーから自分たちにもベスト8入りの望みは残っているーと僅かな可能性にかけたのだというが、ヨーロッパ人のサッカーの粘り強さを見た思いで、ただ脱帽のほかない。

 ブラジル戦での失点は、左からのクロスに対して、そのキッカー(アウレリオ)への間合いの詰め方が遅く、フリーキックのように狙って蹴る時間を与えたこと。また、ボールの落下地点近くに相手は1人なのに、その周りに4人いながら後方から走りこんでくるアレックスを誰も注意していなかったこと−などのポイントはあるが、90分を通して1点差だけだったのは、むしろ幸運といえた。
 前半にブラジルはこのゴール以外にも5度決定的なチャンスがあった。 ロナウジーニョはノーマークに左足シュートとヘディングがあったが、いずれも外れた。中ごろと終わりごろに日本の攻勢の時間があったが−相手の守備を崩してノーマークシュートという場面は作れず、シュートは中村が遠い目のFKを狙って蹴っただけだった。

 後半にはいって相手の動きが少し落ちはじめて日本にチャンスが増える。6分に中村が相手エリア近くでボールを奪い、高原のシュートがあって右CK。それを中村が短く三浦に渡し、リターンをうけて、エリア右角からエリアの稲本に渡し、稲本が反転してシュートした選手プレーはこの試合での圧巻だった。稲本のシュートをGKが防ぎ、このリバウンドを中澤がタッチし、ポスト右に出たときには、ブラジルのベンチはヒヤリとしただろう。稲本がゴールを背にしてボールを受け、大きなフェイントでターンし、得意の右のシュートへもっていったのは、彼のこの大会での成長を示すもの。しかし、そのGKが防いだバウンドを中澤がタッチしようとしたとき、相手DFが一人反応したところは、さすがにブラジル。
 勢いに乗る日本に、ブラジルはDFラインを深くして対処し、カウンターで追加点を狙う。日本は稲本が前に出てチャンスにからもうとする。 中盤で後手に回るブラジルにファウルが増え、日本にFK、CKのチャンスが増える。ロナウジーニョに代わったルーカスが中田(浩)を手で引き倒す。こうして、ひどい反則が出るのはブラジルの選手達が気分的に追い込まれているからだ。
 動きの量でまさり、優位に立っても、相手の守りを崩せないのは、やはり技術の問題。中田(英)欠場は決定的なパスの出し手がいない大きなマイナスだが、選手達一人一人のパスの精度がもう少し高ければ、より効率的な攻めができたのではないだろうかー。後半30分にエリア外でのFKがあり、中村のFKがゴール右すみへと飛んだが、角をかすめて外へ。平瀬を投入し、本山をロスタイムに登場させた攻撃も、結局はブラジルのゴールを敗れないままに終わってしまった。

 選手たちには、ブラジルの゛超本気”プレーを体で感じたのがプラスだろう。この試合から得たはずの自信と学んだものは多いが、日本にとって最も早く修正し、育成時から力を入れなければならないキックの強さと精度の差を選手も指導陣も強く感じたに違いない。

 準々決勝の相手はアメリカ合衆国で、オーソドックスないいチーム。 彼らとの接触プレーに負けない気迫が準決勝進出を決めるのだろう。日本チーム全員がいまオリンピックの舞台で、どんどん腕をあげている。 中田(英)の出場する次の試合で柳沢あるいは平瀬が一皮むけてほしいもの。そうすればベスト4もメダルも近いものになる。