決勝トーナメントはない
 今回のワールドカップを通して、「決勝トーナメント」という表記が浸透してしまい ました。FIFAの表現では韓日で開催される大会全体がtournamentであり、「決勝トーナメント」はSecond Roundということになります。また、「今回は予選を突破すると いう目標は果たした」という言い方もされていますが、予選とはアジア、欧州などの 地域予選を指す表現です。賀川浩は、98年からこの表現について幾度となく指摘して きましたが、この大会でいよいよ決勝トーナメントという表現が定着してしまったこ とは誠に残念です。ファーストラウンドを突破し、世界レベルで実績を積んだのです から、報道、表現においても世界標準を意識していくべきなのではないでしょうか。
 この表現については、掲示板を設置し、皆さんと議論していきたいと考えています。

>>> 皆さんのご意見をBBS/賀川浩にお寄せ下さい。
Page 1/2
BBS書き込みに対する返信 (6.25更新)

たくさんのご意見を寄せていただき、ありがとうございます。
FIFAの大会規程(Regulations 2002 FIFA World Cup Korea/Japan TM)のなかに、今度の大会の試合の仕組みについて
ファイナル・コンペティションは2つのラウンドで行なわれる。
第1ラウンド 32チームがA−Hまでの8グループに分かれる。第1ラウンドのシステムは、リーグ・システムである。各グループの1位と2位が第2ラウンドに進む。
第2ラウンドは 「ラウンド・オブ・シックスティーン(16)」「クォーター・ファイナル(準々決勝)」「セミ・ファイナル(準決勝)」「プレイオフ・フォア・サードプレイス(3位決定)」「ファイナル(決勝)」は全てノック・アウト・システムで行なわれる。

と書かれています。

 したがって、第1ラウンドのことを1次リーグと呼称しているのも、変だといえば変なのですが、1次リーグというのは、もともと1964年の東京オリンピックの時に、日本協会が機関誌上で、全世界の地域予選を行なって参加してくる16チームが、4グループに分かれてリーグを行なうのを"予選"リーグというのは間違っているとして、1次リーグにしたことからきています。当時はオリンピックもワールドカップもファイナル・コンペティション(文字通り訳せば決勝大会)の参加は16チームだったから、1次リーグを勝ち抜いて、各グループ上位2チーム、合計8チームによるノックアウト・システムは、英語ではクォーター・ファイナル、日本語記も古くから準々決勝という言葉があったので「トーナメント」という言い方はしなくてよかった。ただし、当時でも日本協会の広報には、準々決勝以降の組み合わせ表を「トーナメント表」と間違って記載していた。私自身、当時は不明にも、それが間違いとは気付かなかったのです。

 話を1次リーグに戻すと、ワールドカップの場合も、多くのメディアが「大会の予選リーグは…」などと間違っているので、フランス大会の組み合わせ抽選が、1997年12月にマルセイユで開催されたときに日本代表チームの監督、マネージャーが修正を申し入れたのです。フランス大会はFIFAの公式進行表にファーストラウンドでなく、ファーストステージという言葉もあったので、従来の簡単な1次リーグにしたのです。
「予選リーグ」と「1次リーグ」では字数が同じなので活字メディアは組み合わせ抽選の翌日の紙面から予選でなく「1次」にしてくれました。
 ただし、「決勝トーナメント」については説明しても、聞き入れられなかったようです。
 4年前のフランス大会ではFIFAの進行表にはファーストステージ(ラウンドでなくセカンドステージといった表記もあり、ラウンドで統一するかどうか迷ったこともありますが、ともかく、1次リーグという言い方は(1974年と78年の大会には2次リーグもあった)第2ラウンドには対称的でないにしても、間違った日本語ではないのです。

 しかし決勝トーナメントとなると話は違います。
 決勝トーナメントという呼称については、FIFAはこれまで一度も使ったことはありません。1964年の東京オリンピックの頃から、日本協会や、メディアが使っていたかというと、日本のスポーツは古くから、最も人気のあった全国高校野球選手権大会をはじめ、大きなトーナメントがほとんど英語でいうノックアウト・システム(knock- out system)で行なわれてきたので、多くのメディアは、ノックアウト・システムとトーナメントが同意義だと思ってしまったのです。そういう私も、そうでした。

 しかし、外人さんは「スモウ トーナメント」と大相撲のことをいい、日本でもゴルフの大会のことをスポンサーの名を頭につけて「××ゴルフ トーナメント」と呼んでいます。オリンピックでも、サッカー競技のことをフットボール・トーナメントといいます。
 シドニー・オリンピックではフットボールコンペティションとなっていましたが、いずれにしてもトーナメントという英語は、私たちのいう大会、どこか1ヶ所に複数のチームや人が集まって、勝者を決めるもののようです。そして、リーグというのは、もともとグループという意味で、大学リーグは大学生というグループの試合をすることで、それの総当たり戦(ラウンド ロビンという)についてはリーグシステム(リーグ戦形式)という言葉があるけれど、トーナメント・システムという用語はなく、トーナメントはイコール、ノックアウト・システムと、考えるわけにはいかないのです。



 世界で最も古いカップ戦であるサッカーの母国イングランドのFAカップでは、リーグでなく、ノックアウト・システムです。ただしこれはイングランドの各チームがホーム・アンド・アウェイで行なうので、1ヶ所に集まる(甲子園のような)トーナメントではありません。ノックアウト・システムのことをカップ・システムといった時代もあったが、今ではワールドカップのように、××カップという大会が必ずしもノックアウト・システムでないため、カップ・システムとは言わなくなったのです。
 要するにトーナメントというのは、ひとつのところに集まって行なう競技会で、そのやり方はリーグ・システムでも、ノックアウト・システムでも、ゴルフのように、スコアで順位が決まる(メダルプレー)ものもあるので、今メディアが使っている決勝トーナメントという言い方は世界にはないのです。
 これは日本語になっているから、この方が分かりやすいという言い方もできますが、あなたの子どもたちが、もっと英語に慣れ親しんで、疑問を投げかけてくれば、答えに困るのです。決勝トーナメントを英語にすればファイナル・トーナメントとなり、ファイナル・コンペティションと紛らわしくなってしまいます。
 どこかのテレビの宣伝に「FAカップは世界で最も歴史のあるトーナメント方式のカップ戦です」というのがありました。ここまでくるとたいへんですネ。

 4年前から、何度も「決勝トーナメント」論を語ってきたのは、大会イコールノックアウト・システムだとしてきた日本特有の考え方に根づいた表記が気になるからです。「世界の常識は日本の非常識。日本の常識は世界の非常識」とは竹村健一さんのよく使う言葉ですが、スポーツもそう言えそうです。
 折角、ワールドカップ・サッカーという「世界で最も楽しいイベント」があることを日本の多くの人たちが知ってくれたのだから、いわば、世界の常識に日本も仲間入りして、新しい時代に入ろうというのに、肝心のサッカー人が非常識では困りますからネ。
 
 公式プログラム(日本文)には、第2ラウンドと書いて、それでも、16チームの勝ちあがり表を「トーナメント表」と書いているようです。出版元は、英文も出しているハズだから、英文表記にTournamentとしているのだろうか。
 公式という点でゆくと、FIFA Magazineの2002年5月号に、大会の進行プログラムが記載されているが、ここには、98年と同じように、1stステージ(グループリーグ)、2ndステージ(ラウンド16 クォーターファイナルス)、3rdステージ(セミファイナルス ファイナルス)となっています。トーナメントという言葉はもちろん使っていません。



>>> サッカーマガジン掲載記事はこちら


<close>

Page 1/2