決勝トーナメントはない
>>> 皆さんのご意見をBBS/賀川浩にお寄せ下さい。
Page 1/2

決勝トーナメントと16強 <サッカーマガシン2002年6月17日号掲載記事より>

 1次リーグでフランス、アルゼンチンが敗退するという、驚きの連続の大会となり ました。一方、開催国の両国は、ともに1勝1分けで、日本は6月14日のH組最終 戦でチュニジアと、韓国も同じ日にD組最終戦でポルトガルと対戦します。この号が 発売される頃には結果は出ていますが、両国がそろって第2ラウンドに進出すること を祈っています。

 ワールドカップの旅の連載第3回に入る前にひとこと。日本のH組リーグの突破が 近づいてから、例の「決勝トーナメント」の大合唱や「決勝T進出…」の大見出しが テレビや新聞に散乱して、聞くたびに、見るたびに、砂を噛むような思いにかられます。
 テレビのアナウンサーの中には"韓国では決勝トーナメントのことを「16強」といっ ているのです"と不思議そうに紹介している人もあります。同じ共催国なのに、なぜ表 現が異なるのかを調べてほしいものですが、考えてみれば「決勝トーナメント」とい う誤った表現が、日本中に広まっているのも、これを正しいものに変えようとする努 力がなかったのは、日本協会や、私たち古くからサッカーに関わってきた者の責任で あったと言わなければなりません。
 トーナメント論、トーナメントという言葉の意味については、すでに何度も、この 雑誌で触れてきたので改めてここで述べるのは控えることにし、FC JAPAN (http://www.fcjapan.co.jp/)というインターネットのホームページを見て頂いて、 それについての多くのご意見を聞かせてほしいと思います。公式には第2ラウンド、入場券にも決勝トーナメントの文字のないことをもう一度、 申し上げておきましょう。


困った表記 <サッカーマガシン2001年12月26日号掲載記事より>

  一次リーグの組み合わせが決まっていて、いよいよワールドカップ本番も近いという 実感が強くなってきた。
 4年前のフランス大会の組み合わせのときから、当時の岡田武史監督たちが予選 リーグ≠、1次リーグ≠ニいう呼称にしてくれて以来、活字メディアは本大会の 第1ステージでのリーグ戦を予選と記すところはほとんどなくなったが、テレビでは またまた予選リーグが横行し始めた。第2ステージ(日本では第2ラウンドというの が普通らしい)の16チームによるノックアウトシステムのほうを、相変わらず決勝 トーナメントと言っている誤りは、日本協会の出版物がそもそも誤記を通しているの だから、この分では、日本が1次リーグを突破すると決勝トーナメント進出、あるい は決勝T(トーナメントの略らしい)へ―――などという大見出しが踊るのかと思う と、いささか気分が悪くなる―――日本協会の方へも一度申し入れをしておいたのだ が、こちらの力不足で一向に改善されない。
 スポーツ最大のワールドカップを開催する日本のサッカー界は、この国の中で、最 も国際的なはずだから、ほかの多く競技団体もそれぞれの大会で1次リーグの後のノ ックアウト戦を「トーナメント」と言っているのも無理はない。まことに困ったもの だ(チケット表記に決勝トーナメント1回戦とは書いていないので入場券入手の方は ご注意を)。

オフィシャル・サプライヤー、朝日新聞への期待 <サッカーマガシン2000年12月26日号掲載記事より>

 2002年関連のニュースのなかに、朝日新聞がオフィシャル・サプライヤーになったと いうのは、とても面白かった。
 この新聞は大正7年(1918年)の関東蹴球大会の後援や、関西での戦前、戦後のビッ グゲーム「朝日招待」などのイベント開催があり、編集では、サッカー記者の草分 け、山田午郎さん(故人)をはじめ多くの優れた記者がいて、私たちも敬意を払って いたが、社会的にはやはりサッカーはマイナー。大阪でも東京でも販売店主の多くは 「うちは高校野球。サッカーは読売でしょ」という人が多い。
 そういう親代々の販売店を持つ本社が、ワールドカップのオフィシャル・サプライ ヤーになった、というのはなかなかの決断だし、そういう手があったのかと驚きもした。
 お金を払ってワールドカップを自社の宣伝に利用することになるだろうが、朝日の ような大メディアが大会と直接関係することは、それだけで報道にも力が入るだろう し、また、用語の使い方なども、公式のものでないもの、例えば1次リーグ(グループ リーグ)を突破して決勝トーナメント≠ヨ進む―――といった公式用語にないもの を避けるだろう―――と想像するのはうれしいことだ。

リーグ戦のカタール・トーナメント

 というのは、FIFAで第2ステージ、あるいは第2ラウンドと呼んでいる16チームによるノックアウト・システムの、いわば大会の後半部を、日本のメディアは「FINAL TOURNAMENT」といえば、例えば98年フランス大会そのものを指すことになる。
 トーナメントというのは、一ヵ所に集まって勝者を決める大会のことで、ノックア ウト・システム、リーグ・システムに関係ない。1994年の米国ワールドカップのアジア最終予選、日本のいわゆるドーハの悲劇 も、アジア最終トーナメント(Asia Final Tournament in Qatar)で、その試合のや り方は1回戦総当りのリーグ戦だった。

高校野球のノックアウト・システム

 この「トーナメント」という言葉を辞書で引くと、「勝ち抜き試合」とあって、スポーツ用語にはこれにわざわざノックアウト方式と書き加えているものもあるが、世界ではどうやら、そうでないものらしい。
 私自身も、50年前に記者家業に入ったとき、トーナメントとノックアウト・システムを同義に思っていた。高校野球のように、甲子園に集結して行う大会が、ノックアウト方式であるために、トーナメント(大会)といえば、ノックアウト方式と思い込んでいたためだろう。
 ついでながら、リーグというのは、もともとグループでという意味で、同じレベル(Jリーグ1部)のもの、あるいは大学生という同じ身分のもの(東京六大学野球リーグ)を言い、その勝者を決めるラウンド・ロビンと称する総当りのやり方が、リーグ・システムという言葉を生んだ。
 しかし、日本のようにトーナメント方式イコールノックアウト方式という常識は、世界にはない。
 もともとこの間違いは、日本協会が公式の出版物にも××大会で1次リーグ(さすがに予選を経てきた本大会で予選リーグと言う人は減少したが)を突破して決勝トーナメントへ進んだ―――などといまでも記しているから、まず、ここを正さなければならない。
 これはワールドカップの入場券の販売のときにも(当然、決勝トーナメントのチケットとは言わないから)かかわる問題。国際的な分野で日本のスポーツの先端をいくはずのサッカーが決勝トーナメントと言っているのが、サッカーにかかわるものとして、いささか申し訳ないことでもある。
 たかが用語の一つ―――であっても、そこに長い間の積み重ねがあって面白くもあり、難儀でもあるが、まあ21世紀には世界共通の使い方にしたいもの。
 オフィシャル・プライヤーとなったビッグ・メディアに期待をしつつ、師走を迎えるのである。

>>> 皆さんのご意見をBBS/賀川浩にお寄せ下さい。


<close>

Page 1/2